ウクライナ侵攻時の避難行動解析に関する論文がScientific Reportsに掲載されました!

5月15日、NatureのScientific Reportsに澁谷遊野准教授(昨年度までCSIS、現:東大情報学環)、Nicholas Jones氏(World Bank)、関本義秀教授の共著論文”Assessing internal displacement patterns in Ukraine during the beginning of the Russian invasion in 2022.”が掲載されました。

【要旨】
本研究では、2022年のロシアによるウクライナ侵攻時における、ウクライナ国内の避難行動をGPSデータを用いて解析しました。大規模な人口移動の空間的・時間的パターンを、移動する人々の規模と距離に注目して明らかにし、その結果を人道支援に役立てるために可視化しました。 解析の結果、首都キーウでは侵攻の5週間前から人口が減少し始め、侵攻2週目には大幅な減少が見られました(侵攻5週前に減少した人口の4.3倍の規模)。侵攻3週目からは再び市内に戻る人が増え、避難民が自宅に戻り始めたことがわかりました。 一方、キーウ南部に隣接する地域や西側国境に近い地域では、それぞれ侵攻1週目から第2〜3週にかけて多くの人々が流入していることが確認されました。また、比較的裕福な地域の住民は、他の地域の住民に比べて、元の場所から遠く離れた場所に避難する傾向がありました。例えば、北部の裕福な地域に住んでいた人々の19%が500km以上移動したのに対し、北部の裕福でない地域に住んでいた人々では9%に留まりました。 本研究で示したGPSデータを用いた避難行動解析と可視化のフレームワークは、今後も人道支援に役立つことが期待されます。

転出人口と転入人口の割合の週ごとの変化
第8週(2022-W8)が侵攻開始時。
a:転出人口と比べて転入人口がより多い場合はより濃い赤色、転入人口と比べて転出人口がより多い場合はより濃い青色で示される。
b: 各州の転入転出指標を時系列で(週ごとに)示した図。

キーウ市からの避難人口の推定値
第8週(2022-W8)が侵攻開始時。棒グラフの高さは、州からの人口流出と州への人口流入の規模を表す。本研究で使用されたデータセットはウクライナ国外への流れを十分にカバーしていないため、「不明およびウクライナ国外」への流入は特に不明確であることに注意。

【論文情報】
Shibuya, Y., Jones, N. & Sekimoto, Y. Assessing internal displacement patterns in Ukraine during the beginning of the Russian invasion in 2022. Sci Rep 14, 11123 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-59814-w