センター長あいさつ

2024年度から東京大学空間情報科学研究センターの6代目センター長を拝命しました関本義秀です。

空間情報科学研究センターは、その前に議論があった「国立地図学博物館」構想や「新地図学」から始まり、「地理情報科学」を経て、より高く広い視野の学問を目指して「空間情報科学」を標榜し、1998年に設立されたものです。その後はさらに、東大学内だけではなく空間情報科学の全国の研究拠点を目指し、2005年に文部科学省から全国共同利用施設として認定を受け、現在も共同利用・共同研究拠点の形で全国の研究者を支援しています。

実際に設置から約25年近くが経ち、空間情報科学の裾野は大きく広がり、深く日常に根差すものとなりました。スマートフォンでデジタル地図を見る事は当たり前になり、COVID19などをきっかけにまちの混雑状況を人流データで語る事も日常風景となりました。また、人工知能技術により、車で走りながら道路の損傷を自動検出するだけでなく、実風景のような高精細な画像を、生成AI技術を用いて作成する事も可能になっています。さらには周囲の空間情報を計測しながら自動運転が実道に展開されようともしています。

しかし、その一方で、我々の身の周りでは高齢化、人口減少、大規模災害の頻発、あるいはグローバルなレベルでは社会の分断や地域紛争などの安全保障等、複雑な社会課題も増えてきており、それらの解決を自律性、持続可能性の観点からも空間情報科学としての貢献を積極的に考えていく事も必要になっています。

そのような意味では、多くの分野の研究者にとっては、もはや空間情報の利用は当たり前であり、ファーストステージの使命は終えたとも言えます。ここからはさらにウィングを広げ、サステナブルなデジタル空間社会をどのように構築し、牽引していくかという事を真剣に議論していく新たなステージに入っていると考えます。実際に東京大学では当センターが中心となり、デジタル空間社会連携研究機構を2020年に設置し、2024年4月現在で18部局、約80名近くの教員が連携する形で活動、議論を行っております。

このような方向を目指していきたい思いは強く持ちつつも、まだまだ大きいとは言えない当センターを維持・運営し、連携を加速し、常にアップデートしていくには、国内外の皆様の協力が必要不可欠です。今後ともどうかよろしくお願いします。

sezaki-csis

2024年4月1日
東京大学 空間情報科学研究センター
センター長
関本 義秀