柴崎 亮介 教授 空間情報工学研究部門 1998- (個人ページ:: http://shiba.iis.u-tokyo.ac.jp/)

研究課題は大きく2つに分けられる。一つはダイナミックに変化する実世界の情報をそこで活動する移動体(人、車輌など)も含めて計測し、結果を統合することで全体の動きを把握する技術の開発である。これにより空間情報科学の基礎となる「実空間世界データ」が構築できる。もう一つは、空間内で活動する様々な主体の行動を計測結果に基づき、理解・モデル化し、活動を支援する情報サービスのデザインに結びつけ、シミュレーションなどを通じて予測的な行動支援を行う研究である。

実世界を対象にした統合的計測・センシング技術

ある程度の空間的広がりを有した実世界を対象としたセンサで、特に地図作成などを念頭においた際、よく用いられているものは衛星や航空機に搭載された光学センサである。航空機搭載のものはごく最近まで大型の精密アナログカメラが中心であり、高分解能のデジタル画像センサは存在しなかった。そこで住友電工などと共同しその当時の世界最高水準センサの開発、3次元自動マッピング手法の開発などを行い、若干の補助データや人手による修正を行えば非常に効率的にデータを作成できることを確認した。この成果は衛星画像からの地形図の自動作成にも活かされている。また、より詳細な地上データ、特に都市データを得るために車載センサシステムの開発も行った。これは画像センサに加え、安価なレーザスキャナも利用し、レーザデータを初期・概略データとして用いることで画像解析を大幅に容易化し、結果として計測や地物抽出の自動化率を大幅に向上させることに成功した。さらに、小型のレーザスキャナを多数地上に配置し水平にスキャンすることで、周辺の移動体(歩行者や車輌)を高精度・確実にトラッキングする方法も開発した。さらに移動体への搭載も行い、移動しながら移動するものを計測する技術も開発中である。こうした試みは世界的にもきわめてユニークである。なお、こうした各センサからの局所的なデータを統合し、広域における移動体分布等の全体像を即時に把握する技術の開発が今後の課題である。

行動モデルとシミュレーションの組み合わせによる活動支援サービスのデザイン技術

利用者の位置だけに着目してサービスを行う従来型の位置情報サービスとは異なり、利用者の活動履歴やその場所にいたる行程などにも着目し、「物語論」的な視点から時間的・体験的なシークエンスとしてのサービスを構成する方法の開発を行っている。また、個人が自分自身の詳細な行動履歴を容易に管理できる情報ツールを開発し、蓄積される個人行動履歴データからその個人の次の行動を予測し、事前手配的(Proactive)なサービスを実現するための手法を開発している。このほか、実世界で活動する人間のシミュレーションモデルとして、エージェント概念に基づくミクロな行動モデルを開発し、気候変動下での農地の拡大や作付の変容などを全球的に予測する大規模なモデル開発も行った。