中川 万理子 講師 空間社会経済研究部門 2016-(個人ページ:: https://sites.google.com/site/marikonakagawaec/

エスニシティ基づくセグリゲーションとスキルの空間的偏在

都市内のセグリゲーション(居住地の空間的住み分け)に関連した分析においては、エスニシティの違いや所得水準の違い、各エスニック・グループの人口規模の違いが、そのパターンを決定する上で主要なファクターになっていると考えられるが、これらのファクターは現実には時間を通して一定している訳ではない。従って、例えば、移民の流入等によってマイノリティの人口規模が変化する場合、スキルレベルや所得水準に関するエスニシティ・バイアスの度合いが時間とともに変化する場合、さらに移民が受入国で徐々に適応すると想定される場合には、動学的なアプローチを取り込んだセグリゲーションのパターン分析が必須となる。本プロジェクトでは、こうしたセグリゲーションの決定要因が、時間に応じて変化することを考慮した分析を行う。

言語の多様性・異質性と経済発展

様々な使用言語グループが共存するような社会において、それらの多様性・異質性が経済的側面に与える影響を考察することは、国際的な文脈のみならず、地域・都市レベルの文脈でも重要である。言語やエスニシティが多様であるほど互いに異なるスキルを有するから、複数の言語グループが協働しながら各々のスキルを相互補完的に活用することで生産性が高まる。そのため、経済発展に対して正の影響があると考えられており、現に、先進国の都市や地域を対象にした実証分析では、この主張に合致した結果が示されている。他方、途上国を対象にした場合、異言語間コミュニケーションに伴う非効率性によって生産性が逓減すること、及びグループ間の政治的な対立が深刻化しやすいことなどから、言語やエスニシティが異質であるほど、経済発展に遅れが見られる。本プロジェクトでは、いくつかの地理的なスケールにおいて、言語の多様性・異質性が生産性向上に寄与するのか(或いはしないのか)、またそれらが政治・教育等の社会的なチャネルを通じてどのように経済発展に影響を与えるのかに関して、実証的に分析することを試みる。

国際移住に伴うスキル移転に纏わる言語的摩擦と空間経済モデル

使用言語の相違は、移民が言語的障壁によって自身の有するスキルを十全に発揮できないという問題を生じさせる。自分の母語とは異なる言語圏に移住する際に、母国で蓄積した人的資本を移住先の労働市場でスムーズに活用できるかどうかという問題を考察することは、国際的な人口移動が活発な現代において不可欠である。特に、複雑な業務に従事する場合は、単純作業を担う場合に比べて、労働者間の高度なコミュニケーションが必要だと主張されており、母国から移住先へ自身のスキルを移転する際に生じる言語的摩擦に焦点をあてた分析は、とりわけ高スキル労働者の国際移住問題を考えるにあたって必須課題になると考えられる。共通の言語によるコミュニケーションの円滑さは、国際移民のスキル移転に纏わる摩擦を軽減するから、世界的な共通語(例えば英語)を介したコミュニケーションが可能か否かは、国際移住問題を分析する上では非常に重要である。そこで本プロジェクトでは、国際移民と言語的摩擦の問題を考察するための空間経済モデルの構築を目指す。