日下部 貴彦 講師 共同利用・共同研究部門 2016- (個人ページ:: http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/~t.kusakabe/

都市スケールでのヒトの行動に関する動的な空間情報を収集・解析するための技術について研究を行っている.近年,IoT (Internet of Things)をはじめとした情報通信技術の発展は目覚しく,これまで難しかった時間・空間スケールでのヒトや自動車の移動に付随するデータの収集・蓄積ができるようになってきている.このようなデータに関連する技術を前提とし,より高度なヒトの行動データの収集及び分析方法を構築することで,安全で快適で効率的な都市機能のデザインに資することを目標とした研究を行っている.

ヒトの行動に関する動的空間情報の分析

情報技術の進展を背景として収集・蓄積可能となった交通に関連するいわゆるビックデータを解析し,長期間継続的に広域なエリアで収集された膨大な量のデータの全体像を把握し,特徴的・特異な現象を抽出するための技術を構築している.例えば,高速道路に設置されている車両感知器によるデータや,鉄道の交通系ICカードによる改札通過時のデータ(交通系ICカードデータ),物流業者が搭載しているGPSによって収集された大量(約1千億レコード/年の位置情報)のプローブカーデータなど,さまざまなセンシング装置によって自動的に収集された大規模な動的な空間情報を対象としている.このようなデータに対して,可視化手法の構築やデータマイニングを行うことにより,長期間かつ広域で発生する現象の把握,これを踏まえた現象のモデル化を行っている.今後の研究では,自動運転車両が収集するセンシングデータ等など将来収集される新たなデータに対応した方法論の構築が課題である.さらに,単なる現象の把握にとどまらず,このような大規模なデータ及びモデルに基づいたシミュレーション手法を構築することにより,これまでにない空間解像度・時間解像度で都市でのヒトの動きの推定・予測手法を構築していきたい.

データ融合手法の構築

従来,国や地方自治体が実施している交通調査(パーソントリップ調査など)で収集されるデータセットは,将来予測等のために収集されたデータセットであるため,予測に必要な詳細な交通行動が記録されている一方で,長期間・継続的な交通変動が記録されておらずヒトの行動の変動やばらつき等について分析を行うことが難しい.一方,交通系ICカードデータ等のデータは料金収受等を目的として収集されることから長期間・継続的なデータ収集が可能な反面,交通観測を目的としていないことから,従来の交通調査データで知ることのできる詳細な情報を直接的には得ることができず既往の交通調査データで可能な分析が難しいという問題がある.このような背景から,交通系ICカードデータと既往のパーソントリップ調査データを用いた機械学習によるデータ融合手法を構築することで,既往のデータセット及び交通系ICカードデータ単独では難しいトリップの属性の継続的な解析が可能となることを示した.今後の研究では,大規模なプローブカーデータ等を対象とするほか,融合を前提とした行動調査手法の構築や,機械学習による手法を取り入れた融合手法を研究することで,より多くの情報に基づいたモデルの精緻化を行う.