健康関連情報は、一般に空間情報としての取得が容易でないことなどから、従来空間的な要素が強く意識されながらも、空間分析の対象として捉えがたいものが少なくなかった。本研究は、そのような人間の健康に直接的に関与する情報を対象とした、分析手法の開発を行っている。具体的な例として、感染症定点サーベイランスデータによる地域の感染症報告数の母数推定や、過去の心停止発生地点の分布にもとづくAED(自動体外式除細動器)の最適配置に関する方法を提案してきた。また、実際のデータを用いた検証により、地域社会に対する有益な知見を得ることも目的としている。
感染症の流行に見られるような健康危機現象の発生および推移、あるいは地域住民の日常的な身体活動量に影響する居住地周辺の物理的環境要因といった問題について、医学分野の研究者と連携しつつ、実証的な側面から研究を進めている。主なものとして前者では、小学校の欠席率を用いた空間補間によるインフルエンザ流行状況の視覚化、そして伝播過程における時空間的な規則性の発見を主題として、学級閉鎖や地域の地理的特性が流行に及ぼす影響とともに考察している。後者では、土地利用状況、道路密度、公共交通網をはじめとした都市構造を形成する要素を対象として、統計データ処理や空間操作による居住環境指標の計量法について検討を行っている。
通常、周辺住民から好まれない施設である迷惑施設の配置計画について、数理的な分析および評価に関する研究を行っている。なかでも「公平性」という概念に着目した不平等度を計量する指標を、住民から施設までの距離に適用したときの数理的な特性の把握や、さらには清掃工場を想定したときの、「大気汚染」、「電波障害」をはじめとした、施設立地に伴う自然・社会的な諸条件にもとづく目的関数を用いた場合での、候補地比較に関する計量的評価法について検討している。また、過去の配置計画をもとにして、最終的な用地決定に伴う決定要因の優先度の推測を行い、より重視されたと考えられる項目から見た実際の選定理由の妥当性を検証しようとしている。