有川 正俊 特任教授 1999- (個人ページ:: http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/~arikawa

空間能力を日常的に発揮させる空間コミュニケーションツールの研究・開発

人々は、日常的に場所に関係する内容について考えたり、コミュニケーションを行っている。しかし、地図コンテンツが唯一の空間情報の表現手段ではなく、人間は言葉や実写シーンを介して空間情報をコミュニケーションしている。現在のGISは、主に緯度経度のような座標値化したデータおよび地図表現だけに的を絞っており、人間が現実空間で直接的に利用する自然言語表現や実写シーンを取り扱う機能はほとんど無い。言葉や実写シーンなどの人間中心メディアを介して、人間とコンピュータの間で空間情報を楽にやりとりするための新しい空間コミュニケーションツールの探求を行っている。

一般ドキュメントの空間化

電子メール、ウェブ、ワードなどの一般ドキュメントには、住所や地名などの場所記述がよく含まれている。われわれが開発したSDMS(空間文書管理システム)は、高度な対話ソフトウェアであり、ドラッグ&ドロップという簡単な操作だけで、デジタルドキュメントに含まれる住所や地名を抽出し、抽出した場所単語をジオコードして地理座標値に変換し、POI(Point of Interest)を生成し、地図上に表示する一連の処理を実行する。

映像の空間化

GPS付きカメラ付き携帯電話の爆発的普及によって、位置情報付き写真が社会に浸透し、さまざまなシーンで有効利用され始めている。しかし、写真に記録されている位置は、カメラの位置であり、被写体の位置ではなく、「ビルAが写っている写真」といった一般的な問い合わせが取り扱えないという問題が生じている。われわれは、写真に対する有効なコンテクストパターンとして写真ベクトルを提案し、「ビルの反対を撮影した写真」、「ここから左側を写している写真」などの高度な問い合わせを可能とした。

エゴセントリック・マッピング

なぜ地図を利用するかというと、距離関係、方向関係、接続関係、俯瞰関係などの空間関係をわれわれの脳の「空間記憶」として作ったり、強化したいからだと解釈できる。われわれは、新しい知識(記憶)を得たらうれしいし、知識が足りないと未来の予測が難しくなり不安に陥る。不安を解消するために、必要な情報を集める行動を起こす。この記憶獲得・強化の仕組みを説明する中心的概念が発達心理学におけるエゴセントリズム(自己中心性)と考えている。エゴセントリズムを備えた人間の社会文化環境の中で、IT地図が如何に進化をとげているかに関して理論的体系化を行っている。